オダ的 ぽひぽひ古事記

第四話 オオクニヌシノミコト編
~オオナムヂ、オオクニとなるの巻~

登場人物
・オオナムヂ(オオクニヌシノミコト)
・スセリヒメ
・スサノオ

ここまでのあらすじ!
兄達を打ち砕き、地上最強になるためにオオナムヂは〈根の国〉に向かった!
いや、更なる高みへ向かった! ぽひぽひ。

〈根の国〉に着いたオオナムヂは、スサノオのいる御殿にやってきました。
すると中から、美しい女の人が出てきました。
それはスサノオの娘、スセリヒメでした。
二人は目が合います。その瞬間、接吻をぶちかまします。その刹那、僅かコンマ一秒! それから、結婚を決めたのはコンマ五秒!
流石、地上最強を目指す男と地上最強の娘。全てがすごいです。この記録は生きとし生ける生物、どれもが今日まで打ち破ったことはありません。

スセリヒメは、父神であるところのスサノオに知らせに行きました。
 「お父様、外にたいそう立派な神がお見えですわ。」
スサノオは外に出てオオナムヂを見て一言
 「笑止!」
スサノオはオオナムヂを御殿に呼び入れ、ヘビの部屋で寝るよう命じました。

この時スセリヒメは、肩にかけていた薄い布をこっそりオオナムヂに渡しました。
 「この布には、ヘビを追い払うだけの力があります。くいつかれそうになったら三度ふってください。」
オオナムヂはそれを受け取り、軽く匂いを嗅いで部屋に入りました。

すると、いきなりヘビたちが鎌首もたげ、襲い掛かってきました。しかし、オオナムヂは慌てることなく布を振り、布の力なのかオオナムヂの力なのか、有りえない風が吹き、ヘビたちは壁に叩きつけられました。
多分ですが、この間はたったコンマ二秒だったので、布の力が出る前の決着と思われます。

翌朝、部屋から逆立ちで出て来たオオナムヂを見て、スサノオはくりびつてんぎょう!
その夜は、オオナムヂをムカデとハチの部屋に寝かしました。
今度もスセリヒメは、自分の布を渡します。オオナムヂはそれを受け取り、布に鼻をあて大きく深呼吸しました。あくまでも落ち着くための深呼吸です。えぇ、あくまでも。
 前の布はどうしたの?
それはいえません。

そして、ヘビの部屋同様の展開で、ヘビの部屋同様の決着で、ムカデとハチは、
 「だから言いましたやん! 嫌やって!」
と言いながら力尽きました。

次の日、いよいよスサノオ自身が立ち上がりました。スサノオはオオナムヂを草がぼうぼうの広い野原に連れて行きました。いよいよです。オオナムヂは胸が高鳴ります。軽く拳を握り、ステップを踏み、スサノオと対峙します。
しかし、スサノオはかぶら矢を、広い野原に放ち、言いました。
 「あの矢を見つけてきたら相手をしてやろう。あの矢の行方すら目で追えぬものと闘うなど笑止!」

オオナムヂはいい人ですから、
 (闘うためならこれもまた修業。なるほど、スサノオさん、長く生えた草が、こう、クッ、なるほど!)
と意気揚々と野原へと入っていきました。

するとスサノオは、オオナムヂが野原に入ったのを見ると、周りから草に火をつけました。火はみるみるうちに燃え広がりました。
最早ここまできたら、言っても良いでしょう。
スサノオ、やることが汚い! どぶ板です。
背後から火をつけるなんて、三下がやることです。ちょっとオダさん幻滅(まさかのここでオダさん登場www)

オオナムヂは最初、自分の燃え上がる闘志が具現化されたと興奮しました。しかし、あまりにも熱いので、
 (これ、あかんやつや)
と流石に焦りました。

そこにネズミが現れ、言いました。
 「チュウ! チュウチュ! チュチュノチュッ!(内はほらほら、外はズブズブ)」
何故、この業火の中ネズミが平気だったのか、もしかしたらこのネズミこそが最強だったのかもしれません。しかし、ここでは触れません。(チュウ!)
オオナムヂははっとします。
 (全くわからん!)
 「チュウ!」
 (ええぃ! くそぅ!)
っと思いっきり足を地面に叩きつけると、土が崩れ、体がすっぽりと地面の穴にはまりました。オオナムヂが穴の中に隠れている間に、火は頭の上を通り過ぎました。

さて、焼野原を見てスセリヒメは、オオナムヂが死んだと思い、お葬式の用意をして、泣きながら野原へやってきました。段取り良過ぎです。普通は先に野原へ泣きながらですが、そこは先ず準備して、連絡してから行く。お姑もびっくりです。
スサノオも、
 「ちょっとやりすぎたかなぁ。まぁ今度こそ!」
と思い、様子を見に行きます。
そしてスサノオは見ました。有りえない光景を。
立ち込める煙の中、悠々と歩いてくるオオナムヂの姿を!
流石のスサノオもこの時ばかりは少しちびりました。
 「なんやのこの子ぉ」
と大阪のおばはん口調になるくらい驚愕しました。

スサノオは最後の手段に出ました。御殿の大広間に通し、
 「わしの頭のシラミをとれ!」
と命じました。もう、なんだろう、プライドのかけらも強さの象徴もありません。がっかりです。
しかもスサノオの頭に蠢いてるのはシラミではなく、沢山のムカデでした。何がどうなって頭にムカデがいるのでしょうか。これに関しては未だ深い謎です。

オオナムヂはちょっとバカな良いやつですから、
 「リンスなのか? トリートメントなのか?」
と悩みました。考えてるオオナムヂにスセリヒメがこっそり、
 「用途と成分が違うから両方よ。そして関係ないわよ。はい、これ。」
とそっと木の実と赤土を渡しました。

オオナムヂは木の実をかみ砕き、赤土を口に入れて、つばと一緒に吐き出しました。
スサノオは、
 (こいつムカデを噛んで吐き出したのか、そこまで? え? もうなんかちょっと怖い怖い!)
と勘違いして、
 「まだまだだが、まぁなかな感心なやつだな。」
と強がり、眠りました。

スサノオがぐっすり眠っているのを見ると、オオナムヂは、
 (寝ているスサノオさんをどう倒すか、俺は、俺は試されている! 試され続けている!)
っと勘違いし、長い髪を、天井の垂木に結びつけ。動けないようにしました。
そして、古事記あるある《都合がいいところに現る大岩》で広間の入り口をふさぎ、スセリヒメと逃げました。

オオナムヂは、スセリヒメを背中に背負い、スサノオの宝物『なんかすごい感じの刀と弓矢と琴』を掴んで走りました。
兄達に大荷物を持たされた経験が生かされ、有りえない持ち方をしています。

しかし! その時、宝の琴が木の枝に触れ、大地を揺るがすような音がしました。
 (えっ?! そんなにもか!)
と驚く二人。
びっくりして起きるスサノオ。
そして起き上がった途端部屋を引き倒しました。地上最強だったのは彼の毛根と髪の毛でした。
髪をほどくのに手間取っている隙に、二人はどんどん逃げました。

もう少しで地上の国に着くというとき、はるか後ろでスサノオが叫びます!
 「……った………げる……オオク……スセリ…………ずも………ぽひぽひ」
えぇ?
何言ってるかさっぱり分かりません。遠すぎます。しかし、オオナムヂは最強の名を手にした男ですから、はるか遠くのスサノオの口を読唇術で読み解きました。

そして、スサノオが多分、おそらく、きっと言ってたであろう
兄達を、もらった刀と弓矢と己の肉体を駆使し八十人切りをして
地上の国を治めるオオクニヌシノカミとなり、スセリヒメを第一の后にし、出雲の山のふもとに、立派な御殿を立てました。

こうして、地上最強の名を欲しいままにしました。

(完)

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