Introduction
――アンデルセンの掌編集『絵のない絵本』をもとに、
3人の劇作家が描く多彩な世界。
想像力に乗って劇世界を旅する、短篇演劇集。
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今からおよそ200年昔、『絵のない絵本』の著者アンデルセンが生きていた時代は船旅の時代でした。
今回の舞台の原案にしている『絵のない絵本』は月が貧しい絵描きの若者に、窓から世界中の出来事を語りかける掌編集です。大昔からどこにでも顔を出す月が語るのですから、その内容はインドの少女の話、フランス王宮の話、中国の話、そして遠い過去の話など様々な話がおさめられています。
読み手は月の語りに導かれて、世界中を旅します。それは著者アンデルセンの想像力に乗って旅をすると言いかえてもよいでしょう。当時、この本はとても魅惑的な旅行記のように読まれたのではないでしょうか。

さて、ニットキャップシアターの新作公演『月がみていた話』は、『絵のない絵本』にある「月がみていた」というかたちをかりて、いわば「旅行体験ができる演劇」をめざしています。想像力に乗って観客の皆さんに多彩な劇世界を旅していただく短編演劇集です。

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脚本を担当するのは、北九州芸術劇場でディレクターも務める劇団「飛ぶ劇場」の泊篤志氏。札幌を拠点に活動する劇団「intro」のイトウワカナ氏。そして京都を拠点にする私達ニットキャップシアターのごまのはえの3人です。
九州、北海道、そして関西を拠点にする3人の劇作家が、奔放な想像力で「月がみていた」おはなしを書きおろし。
あなたの想像力も羽ばたかせる「旅する演劇」へ、ぜひお越しください!

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人は人以外のものを人のように喋らせたがるが、一番喋って面白いのは月でしょう。もし月が喋ったら、もし月が自分の見てきた話を語りはじめたら、その時の人の慌てぶりはたいしたものでしょう。この「月がみていた話」は月しか知らない話の短編集です。あの戦争の始まりの秘密。浜辺に集まった男女の秘密。ある家族が交わした最後の会話。などなど6つのエピソードを演じます。どれも人間には初公開の月がみていた話です。お楽しみに。

ごまのはえ

Profile
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泊篤志
飛ぶ劇場代表/劇作家・演出家

1968年生。北九州市出身。97年『生態系カズクン』で第3回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。99年『IRON』が第44回岸田國士戯曲賞最終選考にノミネートされる。現在、北九州芸術劇場のローカルディレクターとして九州演劇界の底上に努めている他、全国各地で作・演出、戯曲講座の講師として活動中。
★Link: 飛ぶ劇場

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photo: 原田直樹(n.foto)
イトウワカナ
intro代表/劇作家・演出家

2006年、introを開始。奇抜なポップ感覚で非日常を感じさせながらも日常的な言葉の数々を駆使した、ファンタジーとリアルの同居する世界観を繰り広げる。一方で、普遍的な家族の会話劇やコンテンポラリー演劇と評される詩的作品を発表するなど、作品性は多岐に渡る。札幌劇場祭では2011年より3年連続で特別賞を受賞。2014年佐藤佐吉賞優秀演出賞受賞。
★Link: intro

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photo: 清水俊洋
ごまのはえ
ニットキャップシアター代表/劇作家・演出家・俳優

大阪府枚方市出身。京都を創作の中心に全国で公演を行う。2004年に『愛のテール』で第11回OMS戯曲賞大賞を、2005年に『ヒラカタ・ノート』で第12回OMS戯曲賞特別賞を連続受賞。 2007年に京都府立文化芸術会館の『競作・チェーホフ』で最優秀演出家賞を受賞するなど、劇作家、演出家として注目を集めている。
★Link: ニットキャップシアター

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『少年王マヨワ』2013年6月 @アイホール
photo: Ohagi
ニットキャップシアター

芝居/語り/ダンス/民族楽器の生演奏/歌/仮面や布などのマジカルグッズ……様々な舞台表現と「言葉」とを組み合わせて、イマジネーションあふれる作品を生み出す京都の劇団。1999年旗揚げ。
劇団名はムーンライダーズの楽曲「ニットキャップマン」より。

Cast Profile